でんき科学館(名古屋市中区)の『でんきの戦後50年記念 電力の鬼
松永安左エ門展
(平成7年10月発行)より、中部電力(株)の許諾を受け
て転載します。(中部壱洲会長・
坂本和久氏のご尽力を得ました。)


      
『青春』の詩の翻訳


         
 『青春』について

 原作はアメリカの詩人サミュエル・ウルマン(1841〜1924)。太平洋戦争
直前、マッカーサー将軍が極東軍司令官としてマニラに赴任する時、友人で
あるコーネル大学のルイス教授が、この詩を餞に贈ったとされています。安
左エ門がマッカーサー将軍の執務室を訪問した時に、額に入っていたこの詩
を所望し、訳したとされています。


          
  YOUTH

 Youth is not a time of life____it is a state of mind;
it is a temper of the will,a quality of the imagination,
a vigor of the emotions,a predominance of courage over
timidity,of the appetite for adventure over love of ease.
 Nobody grows old by merely living a number of years;
people grow old only by deserting their ideals.Years
wrinkle the skin,but to give up enthusiasm wrinkles the
soul.Worry ,doubt,self-distrust,fear and despair-these
are the long ,long years that bow the head and turn the
growing spirit back to dust.
 Whether seventy or sixteen,there is in every being's
heart the love of wonder,the sweet amazement at the
stars and the starlike things and thoughts,the undaunted
challenge of events,the unfailing childlike appetite for
what next,and the joy and the game of life.
You are as young as your faith,as old as your doubt;as
young as your self-confidence,as old as your fear,as
young as your hope,as old as your despair.
So long as your heart receives messages of beauty,cheer,
courage,grandeur and power from the earth,from man and
from the infinite,so long you are young.
When the wires are all down and all the central place
of your heart is covered with the snows of pessimism and
the ice of cynicism,then your are grown old indeed and
may God have mercy on your soul.

         Samuel  Ullman


  
          青  春
          
 サミュエル・ウルマン原作
                    松永安左エ門訳

 
青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言
うのだ。逞しき意思、優れた創造力、炎ゆる情熱、怯懦を却
ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こういう様相を青春
と言うのだ。
 年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老
いがくる。歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失う時に精神
はしぼむ。苦悶や狐疑や、不安、恐怖、失望、こう言うもの
こそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰
せしめてしまう。
 年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得る
ものは何か。曰く、驚異への愛慕心、空にきらめく星晨、そ
の輝きにも似たる事物や思想に対する欽迎、事に処する剛毅
な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興
味。

 人は信念と共に若く 疑念と共に老ゆる。
 人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる。
 希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる。

大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして
偉力の霊感を受ける限り人の若さは失われない。
 これらの霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽い
つくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至れば、この時に
こそ人は全くに老いて神の憐れみを乞う他はなくなる。


     
サミュエル(サムエル)・ウルマン

 1840年、ドイツに生れ、1851年にアメリカに移住。1860
年、南北戦争に南軍として参加。1884年、金物屋を開業。1993
年、教育委員会委員長。1920年4月、80歳の誕生日に当り、家族
がウルマンの詩集『八〇年の歳月の頂きから』を出版。1924年3月
21日、バーミンガムにおいて死す。八四歳。


   
「青春」の詩を心の拠りどころに!!

 
「青春」の詩は、多くの人達に共感を与えており、心の支えとな
っています。

@松下電器産業の創業者の松下幸之助氏は、

 
青春 青春とは心のわかさである信念と希望にあふれ勇気にみちて
  日に新たに活動をつづけるかぎり青春は永遠にその人のものである


 を色紙に認められています。

A女優山本富士子さんは、

 平成14年12月1日の日経新聞の
私の履歴書欄に、

    
「いのち燃やして 挑戦を重ねた女優50年」 
       「『いつも青春』自分磨き続け」

のタイトルで、

 
「S・ウルマンの『青春』という詩が好きなので、その詩を財布の
中に入れて持ち歩いている。

 
『青春とは、人生の或る時期ではなく、心の持ちかたを云う。年を
重ねただけで、人は老いない。理想を失う時、初めて老いる。』

 私はこの詩のように、いつも青春の心持でいる。


と寄稿されています。


    
  「青春」掲載の図書

   
私は、次の図書を購入しました。(平成11年10月31日 50版)

    
宇野収・作山宗久著 『「青春」という名の詩』
       産能大学出版部発行
       
・рO3−5760−7801

※「
青春」の訳文は、他にもあるようです。

※ある翻訳家が、優れた翻訳文にするためには、外国語を学ぶだけでな
 く、国語の素養を十分付けておくことが肝要だと話しておられました。

 格調高い「
青春」の訳文は、松永翁が持ち前の探求心で翻訳を発心さ
 れた所産だと思いますが、漢字・漢文に対しての該博(
文中各所に
 松永翁の常用の言葉があるといわれています
)で、文才家としての
 真面目が如実に表れています。
 
※なお、知り合いになった『
電中研記念誌』の編集委員の方に、松永翁が
 「
青春」の詩を訳されたのかと問い合わせましたところ、
 
 
松永翁の電中研時代に秘書をされていた方から、翁が『青春』を
 訳されたという確認を得た


 という連絡を受けました。

 

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